注目企業・特集2025年2月号掲載
〜THKの製品&技術〜
新たな自動化需要を喚起し社会課題を解決
- 高性能化、FA、AIソリューションをJIMTOFでアピール
- THK(東京都港区芝浦2-12-10)
最新の自動化技術に触れようと来場者でにぎわうTHKのブースモノづくり立国・日本を象徴する展示会、日本国際工作機械見本市(JIMTOF)が24年11月5日~10日に東京ビッグサイトで開催された。最新の工作機械や製造技術情報に触れようと国内外から約13万人が詰めかけた中で、多くの来場者が足を止めていたのが「新たな需要を喚起する自動化提案」をテーマに掲げたTHKのブースだ。自動化、無人化の実現は「世界的な社会課題の解決につながる」(星出薫常務執行役員)といい、「機械装置の高性能化」「FAの構築・拡充」「AIソリューション」をキーワードに解決策となる新製品・新技術をアピールした。
ISO規格に準拠した超低ウェービングLMガイド
ISO規格に準拠し、超低ウェービング性能を実現したボールリテーナ入りLMガイド機械装置の高性能化に求められる機械要素部品として注目されたのが、ISO規格に準拠した世界標準寸法の 「超低ウェービング ボールリテーナ入りLMガイド」と総ボールタイプ精密ボールねじ「BSM」、高速ローラーリング「RT」の3製品。超低ウェービング ボールリテ ーナ入りLMガイドは8条列構造と小径ボールを採用することで、真直度に影響を及ぼすウェービングを低減。加工面品位の高い工作機械や高レベルの位置決め精度を持つ半導体製造装置の開発につながるという。またISO準拠であるため、現行機械の性能を高めたいというレトロフィットニーズに対しても、ガイドを置き換えるという新しい解決策を提示していく。
BSMは化学的な耐性を懸念する需要層に提案する。新たなボール循環方式の考案により、リテーナなしでDN値170,000の高速性能を実現した。RTはDpw・N値が300,000の高速性能と回転時の発熱抑制を両立。工作機械開発の幅が広がるという。
製造現場の自動化、「高性能」と「使いやすさ」追求
FA構築・拡充をテーマにした展示では、製造現場の自動化で求められる「高性能」と「使いやすさ」を追求した独自製品を提案した。磁石を搭載したスライダが動作するムービングマグネット方式のリニアモータ駆動の「次世代リニア搬送システム」は、ケーブル取り回しの問題から解放され設計の自由度が飛躍的に高まることを紹介。工程レイアウトに応じた搬送システムを展示し、フットプリントが最大化できることを強調した。
可搬質量10kg、生産性225ピック/時(展示品仕様)のコンテナ型自動倉庫ユニットも注目された。自動化提案の幅を広げるため、多段スライドユニットと左右に配置した棚で構成するオリジナルの自動倉庫を披露。整然としない物流倉庫の整理整頓や在庫管理システムを導入したいが大がかりな投資は計画できず、簡易・小規模なもので十分というニーズをすくい上げていく。同倉庫ユニットとすでに市場投入している円筒座標型モジュール「MLS」、フレキシブル次世代搬送ロボット「SIGNAS」を組み合わせれば、同倉庫ユニットから素材を取り出し、 SIGNASで加工現場に搬送、MLSが受け取り加工機に投入、加工後の部品は逆の流れで同倉庫ユニットに保管する、といったモノづくり現場で求められる自動化が簡単、迅速に導入できる。
OEEを最大化する「OMNIedge」
搬送路を分岐・並列化、さらに上下にもレイアウトすることでフットプリントを高めた次世代リニア搬送システムTHKがAIソリューションとして提案に力を入れていたのがOEE(設備総合効率)最大化プラットフォーム「OMNIedge(オムニエッジ)」だ。現場で発生するロスを削減してOEEを最大に高めるソリューションサービスになり、これまでに機械や設備の重要部品となる直動、回転部品の故障を予兆検知するサービスを投入。切削工具の欠損や摩耗度を検知・監視するサービスもリリースした。
故障を予兆する診断サービスは、運用のカギを握る異常検知のしきい値をAIが割り出す。設備ごとに状態と条件が異なることから保全管理者泣かせであったしきい値設定の手間なしに、最適なメンテナンス時期が見極められるようになる。工具監視サービスはセンサーの後付け(レトロフィット)を可能にし、工作機械のメーカーや年式にも縛られない。AIがセンサーからのデータを解析すればするほど検知精度が上がり、製造現場の持続的な生産性向上に結び付く。
簡易・小規模な自動化ニーズにこたえるコンテナ型自動倉庫ユニット 提供するサービスメニューは設備保全業務の効率化や保全技能を持つ人材の可視化、といった領域にも広げる。「メンテナンス統合管理システム」は保全活動の総合的な管理・運用をサポート。保全履歴や修理の進捗、定期点検の通知といった情報をクラウド上で一元管理し、活動のPDCAサイクルを効率的に回せるようになる。保全技能人材を可視化する「スキル管理AIソリューション」は、技能データと設備保全データを組み合わせて設備と人に起因するロスの低減を実現。教育計画の立案といった戦略的な人材育成にもつなげられるという。