注目企業・特集2022年6月号掲載
~THK社の製品&技術~
ロボットを使いやすく。THKが自動化ニーズを具現化
- ~生産・物流を支えるシステムを国際ロボット展で提案~
- THK株式会社(東京都港区芝浦2-12-10)
【写真①】
国際ロボット展の会場ではコロナ禍の来場制限下にも関わらずTHKのブースに多くの来場者が訪れた2022年3月9日~12日に東京ビッグサイトで開催された世界最大規模のロボット・トレードショー『2022国際ロボット展』。新型コロナウィルスによる来場制限がありながらも3年ぶりの開催ということもあり、会場には6万人以上の来場者が訪れて大いに賑わった。この中、工作機器で高いシェアを持つTHKは、〝動き〟の技術によって工場での生産作業をサポートする、協働ロボットやロボットハンドシステムなどを出展。同社のブースには、工場のIoT化を検討する大勢の人々が集まった。
「ロボット走行軸用モジュールMRT」で生産向上
【写真②】
「ロボット走行軸用モジュール」は、ロボットの作業範囲を拡張し、複数装置での活用を可能にする
THK製品で今回の目玉の一つとなったのが、「ロボット走行軸用モジュールMRT」である。工場内を産業用ロボットが移動するためのロボット走行軸をモジュール化したものだ。搬送、組立、溶接などにおけるロボットの作業範囲を拡張し、複数装置での活用を可能にする。工場内の環境に合わせてラック&ピニオンによる駆動形式だけでなく、天吊り形式も可能なため、幅広い要望に対応できる。搭載するロボットの質量別に7種類のラインナップがあり、最大2.5tまで各メーカーのロボットを搭載可能だ。従来では、導入するロボットの種類や用途に応じてシステムインテグレーター(SIer)が運用システムの設計や構築を一から行う必要があり、設備導入までに時間が掛かった。だが、この製品では走行軸がモジュール化されているため、設計・組立工数を削減し、設備立ち上げまでの時間を大幅に短縮。ロボットの取付プレートやロボットスタンドを用意しており、容易にロボットを取り付けられる。また、転動面にサーキュラーアーク溝を採用した、ミスアライメントに強い特長を持つLMガイドHSRを採用しており、水平だしの難しい箇所でも長寿命と長期間の精度維持が可能となる。さらに、小型ロボット向けのベルト駆動と大型向けのラックアンドピニオン駆動の2種類から駆動仕様を選択可能。ベルト駆動のストロークは最大4.7m。一方、ラックアンドピニオン駆動では、設備に合わせてつなぐことが可能で、最大20mまでストロークを延長できる。加えて、同モジュールでは、ラック自動給油装置やマルチスライダ、踏板カバー、ケーブルチェーンなど、各種アクセサリを取り揃えており、工場のスペースや環境に合わせた自由な設計ができるのも大きなメリットだ。機械部品から工作機械まで工場内設備を幅広く取り扱う同社だからこそ可能となったモジュールと言える。同モジュールにより、各社の様々なロボットが同一走行軸で活用できる。作業範囲が拡大し、1台で複数の工程を遂行させられるため、生産性の向上にも貢献。ロボットの可能性が大きく広がる。
物流業界のピッキングを自動化する「PRS」
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「ピッキングロボットハンドシステム(PRS)」は、ピッキング作業の“見る・取る・移す”の自動化を実現
一方、物流業界のピッキング作業の自動化としてTHKが提案したのが「ピッキングロボットハンドシステム(PRS)」だ。これは同社が開発した高性能ロボットハンドを搭載し、掴む+吸着のハイブリッドが可能で、ピッキング作業の“見る・取る・移す”の自動化を実現したオールインワン型のピッキングシステムだ。仕分けのターゲットとなる棚にスライダとロボットアームでハンドを素早く正確に移動させ、ハンド部に搭載したカメラで商品を認識する。そして、高性能な4本指のロボットハンドにより、箱状・円筒状・袋状など、様々な形状のアイテムをしっかりと掴み、1つのハンドで多品種アイテムのピッキングを実現。現行の棚からピッキングができ、既存システムへのビルトインも可能で、短期間かつ低コストでセットアップできる。PRSは多品種で様々な形状のアイテムを正確にピッキングし続けるため、生産性も高い。コンビニやeコマース業界など、物流センターの自動化に最適だ。また、同社の自動搬送ロボット「SIGNAS」と連動させることで、ピッキングした製品を次工程の場所へと自動搬送することも可能だ。ピッキングの後工程も含めて、物流の仕分け作業をまとめて自動化できるのだ。
回転モジュールで要望が叶うロボットシステム
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「回転モジュール」を顧客のニーズに沿って組み合わせることで、生産工程の無駄を排除できる
また、同社が開発した「回転モジュールRMRシリーズ」は、ロボットの関節部分などのニーズに応える。複数の回転モジュールとアーム部品を組み合わせることで、顧客のニーズと環境に合わせたオーダーメイドのロボット設計が可能になる。THK製クロスローラーリングを主軸受に採用しているため、大きなモーメントを負荷することができる。ドライバは回転モジュールの外側に別置きすることで、回転モジュール自体の小型化を実現させた。また、ユーザーがドライバを自由に選定することができ、自社製のドライバを使用したいというニーズにも対応する。本製品を使用したロボットシステムとして、関係会社のTHKインテックス㈱が「コンビネーションロボット」を提案している。工場や倉庫での装置間搬送やピッキング、商品配列のほか、店舗や研究施設など幅広い分野で活用が可能だ。

ワーク形状にならって吸着・把持「ならいハンドシリーズ TNH」
「ならいハンドシリーズ TNH」は、ワークの形状にならってしっかりと吸着・把持ができる小型軽量の汎用ロボットハンド。ワーク形状に合わせて柔軟に変化する“ならい機構”を搭載し、複雑な形状のワークでも安定して吸着または把持が可能。すべてのパッドが接していなくても吸着する絞り弁を内蔵した「ならい吸着ハンド」と、開閉と把持力の制御を容易に行うコントローラ内蔵の電動グリップハンド「ならいグリップハンド」などがあり、用途に応じた使い分けも可能。工業用品、医薬品、化粧品、食品、雑貨など多彩な製品ピックアップが可能。
サインポスト誘導で導入が容易 自律走行搬送ロボット「SIGNAS」
「SIGNAS」は、誘導用のルートテープがいらず、今までにない新しい誘導方式の搬送ロボット。目印となるサインポストを内蔵カメラで認識し、独自の制御システムで自律移動する。目印を設置するだけで、内蔵カメラが距離や方位を計測し、サインの指示に沿って間隔や走行距離に従って移動搬送を行う。経路の設定や変更が簡単にできるため、設置工事が早くコストも安価。また、ルートテープの変更工事や地図データの設定などが不要で、レイアウトの変更も手軽にできるため、メンテナンスも容易。積載・牽引の両用途において幅広く使用できる。
SEED Solutionsプラットフォームロボット「SEED-R7シリーズ」
「SEED-R7シリーズ」は、サービスロボット構築用に開発された、スマートアクチュエータ搭載のプラットフォームロボット。等身大上体ヒューマノイドSEED-Noid、昇降ユニット SEED-Lifter、全方向移動台車 SEED-Moverなど、サービスロボットの開発の種(SEED)となるユニットで構成。通常であれば膨大な時間と労力を要するロボットの開発を、ロボットの構築には欠かせないメカ設計、電気・電子制御、基本ソフトなどの要素をユニット化して導入し易くしたことで、顧客の思い描くサービスロボットのアイデアを短期間で簡単に実現できる。